Monday, June 02, 2008

-Novell CEO Linuxの課題を語る-               LinuxWorld 2007 San Francisco                TF#013 Archive 8/18/2007


今年も恒例の「LinuxWorld 2007 San Francisco」が開催(8/6-9)された。
ただこれまでのカンファレンスと異なり、サーバーLinuxは完全に成熟し、企業内データセンターでの活躍が期待されていることから「次世代データセンターNext Generation Data CenterNGDC)」と連携する催しとなった。

一方でデスクトップLinuxの人気が盛り上がってきた。業績不振だったDellは、ユーザからの要望を受けてLinux搭載機(デスクトップとラップトップ)を米国内で5月から発売し、ヨーロッパでも開始する。市販のプリインストール版パソコンLinux機はこれが初めてで、ユーザにとってはWindowsに代わる選択肢として人気が高い。会場ではDellによるデスクトップLinux教室やNovellによるメール・パビリオンも開設されて、大勢の人達が身近になったLinuxを楽しんでいた。

Linux成長の3つの課題>

さて、カンファレンスのキーノートで注目されたのはNovell CEO Ronald Hovsepian氏のキーノートだ。氏は同社のSUSE対応を交えながらLinux普及のための3つの課題について説明を始めた。

まず、①「ISVの拡大-Enlarging ISV」。

Hovsepian氏はカーネルやセキュリティなどLinuxの長所を生かすためには、アプリケーションを提供してくれるソフトウェア・ベンダー(ISVIndependent Software Vendors)との関わりを改善することが急務だと切り出した。Windowsと違い、Linuxの弱点は殆ど同じ筈だとは言っても複数のディストリビューションが存在することだ。このためISVは、彼らのアプリケーションを個別に移行して動作確認を行い、その後のメンテナンスも必要となって、煩雑な作業を強いられている。

コミュニティーとLinuxディストリビューター間には良好な関係が築かれて、これによってプロプライエタリーなプラットフォーム開発には見られない迅速化や高品質、そしてコスト削減が可能となっている。このような関係をISVとの間にも作り上げて、共栄するエコ・システムを築かなければならない。このため氏は、ISVアプリケーションの移行標準を定めた認定制度「ISV Certification Process」をLinuxの標準機能を決めるLSBLinux Standards Base)の延長で検討してみようと呼びかけた。

次に、②「次世代データセンターの具体化-Enabling Next Generation Data Center」だ。

ApacheSambaなど多くのコミュニティー、そして企業スポンサのEclipseMonoなどの幾つもの努力が重なって、Linuxの企業実績は増えた。調査会社のデータでもLinuxのもっとも有望な市場はデータセンターだという。だからこそ、Hovsepian氏はもう一度、議論の活発化している次世代データセンター(NGDCNext Generation Data Center)にどのように取り組むかを考えようと提言する。

NGDCの課題として氏は、仮想化、システム管理、セキュリティ、Linux、電源問題等を挙げ、自身の考えとSUSEでの対応を述べた。取り分け、仮想化は2010年までにLinux60%シェアを占めるだろうと言われているが、異機種混合下での物理的かつ論理的なシステム管理は容易ではないとし、Microsoftとの提携の正当性を暗に滲ませた。またセキュリティではアプリケーション領域の対応を訴え、SaaSSoftware as a Services)環境で安全に処理するためのプロファイルをコミュニティーの協力で「Community Profile Library」として探る方向を示した。全ての核となるLinuxについてはSunが進めるOpenSolarisとの融合も大事な要素だとし、ツールセットだけでなく、互いの交流によって、Solarisのインストールが簡素化され、Linux128ビットのファイル・システムが実装されるのなら大歓迎だとした。

 また、データセンターの省エネ問題について、OSから見た取り組みとしてAMDとの間でプロジェクトを立ち上げたと説明し、ハードウェア・ベンダーだけでなく、ソフトウェアとの連携によって、より効果的な管理を目指すという。

この省エネに関しては、HPAnn Livermore女史(EVP)も別のキーノートでハードウェア・ベンダーから見て、データセンターの効率的な運営のためには、仮想化技術や自動化運転でソフトウェアとの連携が不可欠であるとし、業界が立ち上げたデータセンター省力化の「The Green Grid」活動や「Big Green Linux」についても言及した。

最後に、③「市場拡大-Expanding Market」について、同社の新しい取り組みについて語った。まず、市場拡大の手法として自社だけで頑張るのではなく、異なる資源を組み合わせて行う「ミックス・モデル」を実践するとし、このためにIBMと提携したと発表。この提携では、IBMApache Geronimoベースのオープンソース版WebSphere Application Server Community EditionWAS CE)をSUSE Enterprise Linuxと共に配布してサポートする。これによってRed HatJBossの組み合わせに対抗し、中堅企業向けアプリケーション・サーバ市場を開発する。

次に、氏は「コミュニティー開発」を加速させ、コミュニティー・プロジェクトの活性化から市場を拡大させたいと述べた。この試みとしてコミュニティー版openSUSE向けに新たなディストリビューション作りを加速する「openSUSE Build Service」を強化する。このビルト・サービスは、デベロッパーが独自のLinuxディストリビューションをパッケージ化する開発支援環境で、パッケージ形式にはSUSEが採用しているRPMDebiandebに対応、これによってSUSEだけでなく、FedoraDebian/Ubuntuなどのパッケージングが可能となる。


Linuxのより一層の利用拡大のために、氏があげた課題には共感するところが多い。

デスクトップLinuxの人気が出始め、サーバーLinuxが企業内、特にバックオフィスで普及し、次なる目標が次世代型のデータセンターとして見えてきたことは喜ばしい。

氏が呼びかけるISVによるアプリケーションの充実、このためには誰の目にも新たな仕組みが要るように見える。ディストリビューター間のシェア争いだけでなく、このあたりの議論を加速させることは急務であり、それが出来なければ今までのプロプライエタリーな文化と同じになってしまう。その火付け役はオープンソースの重鎮やコミュニティーにあるように思うのだが。

-Napsterから生まれ落ちたSNOCAPのビジネス-        TF#012 Archive  7/15/2007


Napsterを興したShawn Fanning氏と仲間が立ち上げたデジタル・レジストリ・ビジネス(Digital Registry Business)のSNOCAP社(www.snocap.com)が軌道に乗り始めたようだ。

ノース・イースタン大学の学生だったShawn Fanning氏が、大学内のネットワークで仲間と音楽を共有するために作ったソフトウェアがP2P(ピァー・トゥ・ピァーPeer to Peer)の始まりである。ビジネスとしてNapsterを興したのは19999月のこと。ユーザは仲間と共有する意思がある音楽ファイルをNapsterのサーバに登録し、サーバが音楽ファイルと所有者のリストをまとめて管理する。ファイルをダウンロードしたいユーザは、同社のサーバ上のリストから欲しい音楽ファイルと所有者を検索し、専用ソフトウェアを使って所有者から直接ダウンロードする。これが若者をトリコにしたP2Pシステムの仕組みである。

しかし、ユーザの大部分は、彼らの技術を正しく使わず、実際のファイル交換の殆どが著作権を無視、同社はその年の12月に全米レコード協会RIAARecording Industry Association of America)から訴えられた。

Napsterのその後の変遷は厳しかった。

20013月に暫定敗訴となり、その後の交渉もむなしく、同年7月シャットダウン。2002年6月に破産、その資産はCD書き込みソフトウェア会社のRoxioが買収した。翌200310月、RoxioNapsterの資産を使って、法に準拠したサブスクリプションと有料のオンライン・ミュージック・サービスを立ち上げた。これは実際にはP2Pではなかったが、専用のクライアント・ソフトウェアを使って試聴後、専用サーバから有料でダウンロードするため「Napster 2.0」と呼ばれた。今日隆盛を誇るApple iTunes Storeがスタート(20034月) した半年後のことである。


1年後の2004年、RoxioNapster2.0500万曲を販売したと発表し、徐々に売上げを伸ばして2005年にはNasdaqに上場。その後、親会社のRoxio20048月、コンスーマ向けソフトウェア部門をSonic Solutionsに売却して、社名をNapsterと改名して現在に至っている。

このような状況の一方で、2002年、SNOCAPwww.snocap.com)が設立された。

当時まだ21歳であったShawn Fanning氏は何人かの仲間とNapsterが抱えていた問題を解決し、何とかP2Pを継続することを考えていた。レコード会社やアーティストがダウンロードを許してくれ、かつ彼らがそのまま著作権を保持するためにはどうすれば良いか。新会社の名前は既に「SNOCAP」と決まり、VCも資金供給を約束してくれていた。

紆余曲折の結果、20056月になって、やっとたどり着いた仕組みが「デジタル・レジストリ」である。この方法ではアーティストが自分で販売したい音楽を登録し、著作権を保持したまま販売する。配布は同社のサーバからでもP2Pでも構わない。つまり、アーティストとユーザを直接結ぶオンラインのエンド・ツゥ・エンド・ビジネスである。勿論、中小の独立系レコード会社が保有音楽を登録することも出来る。再生には指定されたDRMの搭載プレイヤが必要だ。この議論で活躍したのはShawn Fanning氏が最初に雇った元Napsterのシニア・テクノロジ・ディレクターAli Aydar氏であり、氏が現在のCOOである。


デジタル・レジストリには、3つの方法がある。

SNOCAP MyStore」は、SNOCAPサイト内に自分の店を出し、アーティストは自分たちの音楽をアップロードさせ、価格も自由に設定、SNOCAPの取り分は一律である。2つ目は「SNOCAP Linx」、これはレジストリを登録し、実際の音楽ファイルはレコード販売会社のサーバにあって、 それらをシームレスに連動させて提供する。3つ目が「P2P Plug-in」だ。これはSDKとして提供されるDDLAPIを使用し、デベロッパはSNOCAPとインターフェースを取りながら自由にシステムを作ることができる。この場合もレジストリはSNOCAPを使い、実際の音楽ファイルはP2Pで転送される。これらのサービスはPhilipsからライセンスされているデジタル音声指紋技術を使用した合法性を確保している。

昨年夏、アリゾナのローカル・バンド「The FORMAT」と組んでMyStoreのテストを開始した。結果は瞬く間に1,000ダウンロード販売に達し、この成功を受けて、昨年9月にはMySapce.com

が提携を申し込み、今年1月には独立系レコード会社が共同で立ち上げたライセンス管理のMerlinとも提携した。6月末には英EMI Musicも加盟し、MyStoreから直接DRMフリーの音楽を販売することとなった。続いて、音楽やビデオのSNSimeem.comも参加を決め、独立系レーベルや個人ミュージシャンの音楽300万曲をレジストリに登録、Imeemのユーザは無料、ミュージシャンには広告収入から報酬が支払われるサービスを開始した。

今までオンライン・ミュージックの著作権問題は難航してきた。

しかし、iTunesを始め多くのオンライン・サイトが出来、レコード会社も有力な販売チャネルとして認め始め、さらにDRMフリーの動きも顕在化してきた。SNOCAPのレジストリは、これらを取り纏め大から小までをポータル化する。やっと時代が巡ってきたようである。