元Napsterを興したShawn Fanning氏と仲間が立ち上げたデジタル・レジストリ・ビジネス(Digital Registry Business)のSNOCAP社(www.snocap.com)が軌道に乗り始めたようだ。
ノース・イースタン大学の学生だったShawn Fanning氏が、大学内のネットワークで仲間と音楽を共有するために作ったソフトウェアがP2P(ピァー・トゥ・ピァーPeer to Peer)の始まりである。ビジネスとしてNapsterを興したのは1999年9月のこと。ユーザは仲間と共有する意思がある音楽ファイルをNapsterのサーバに登録し、サーバが音楽ファイルと所有者のリストをまとめて管理する。ファイルをダウンロードしたいユーザは、同社のサーバ上のリストから欲しい音楽ファイルと所有者を検索し、専用ソフトウェアを使って所有者から直接ダウンロードする。これが若者をトリコにしたP2Pシステムの仕組みである。
しかし、ユーザの大部分は、彼らの技術を正しく使わず、実際のファイル交換の殆どが著作権を無視、同社はその年の12月に全米レコード協会RIAA(Recording Industry Association of America)から訴えられた。
Napsterのその後の変遷は厳しかった。
2001年3月に暫定敗訴となり、その後の交渉もむなしく、同年7月シャットダウン。2002年6月に破産、その資産はCD書き込みソフトウェア会社のRoxioが買収した。翌2003年10月、RoxioはNapsterの資産を使って、法に準拠したサブスクリプションと有料のオンライン・ミュージック・サービスを立ち上げた。これは実際にはP2Pではなかったが、専用のクライアント・ソフトウェアを使って試聴後、専用サーバから有料でダウンロードするため「Napster 2.0」と呼ばれた。今日隆盛を誇るApple iTunes Storeがスタート(2003年4月) した半年後のことである。
1年後の2004年、RoxioはNapster2.0が500万曲を販売したと発表し、徐々に売上げを伸ばして2005年にはNasdaqに上場。その後、親会社のRoxioは2004年8月、コンスーマ向けソフトウェア部門をSonic Solutionsに売却して、社名をNapsterと改名して現在に至っている。
このような状況の一方で、2002年、SNOCAP(www.snocap.com)が設立された。
当時まだ21歳であったShawn Fanning氏は何人かの仲間とNapsterが抱えていた問題を解決し、何とかP2Pを継続することを考えていた。レコード会社やアーティストがダウンロードを許してくれ、かつ彼らがそのまま著作権を保持するためにはどうすれば良いか。新会社の名前は既に「SNOCAP」と決まり、VCも資金供給を約束してくれていた。
紆余曲折の結果、2005年6月になって、やっとたどり着いた仕組みが「デジタル・レジストリ」である。この方法ではアーティストが自分で販売したい音楽を登録し、著作権を保持したまま販売する。配布は同社のサーバからでもP2Pでも構わない。つまり、アーティストとユーザを直接結ぶオンラインのエンド・ツゥ・エンド・ビジネスである。勿論、中小の独立系レコード会社が保有音楽を登録することも出来る。再生には指定されたDRMの搭載プレイヤが必要だ。この議論で活躍したのはShawn Fanning氏が最初に雇った元Napsterのシニア・テクノロジ・ディレクターAli Aydar氏であり、氏が現在のCOOである。
デジタル・レジストリには、3つの方法がある。
「SNOCAP MyStore」は、SNOCAPサイト内に自分の店を出し、アーティストは自分たちの音楽をアップロードさせ、価格も自由に設定、SNOCAPの取り分は一律である。2つ目は「SNOCAP Linx」、これはレジストリを登録し、実際の音楽ファイルはレコード販売会社のサーバにあって、 それらをシームレスに連動させて提供する。3つ目が「P2P Plug-in」だ。これはSDKとして提供されるDDLやAPIを使用し、デベロッパはSNOCAPとインターフェースを取りながら自由にシステムを作ることができる。この場合もレジストリはSNOCAPを使い、実際の音楽ファイルはP2Pで転送される。これらのサービスはPhilipsからライセンスされているデジタル音声指紋技術を使用した合法性を確保している。
昨年夏、アリゾナのローカル・バンド「The FORMAT」と組んでMyStoreのテストを開始した。結果は瞬く間に1,000ダウンロード販売に達し、この成功を受けて、昨年9月にはMySapce.com
が提携を申し込み、今年1月には独立系レコード会社が共同で立ち上げたライセンス管理のMerlinとも提携した。6月末には英EMI Musicも加盟し、MyStoreから直接DRMフリーの音楽を販売することとなった。続いて、音楽やビデオのSNSのimeem.comも参加を決め、独立系レーベルや個人ミュージシャンの音楽300万曲をレジストリに登録、Imeemのユーザは無料、ミュージシャンには広告収入から報酬が支払われるサービスを開始した。
今までオンライン・ミュージックの著作権問題は難航してきた。
しかし、iTunesを始め多くのオンライン・サイトが出来、レコード会社も有力な販売チャネルとして認め始め、さらにDRMフリーの動きも顕在化してきた。SNOCAPのレジストリは、これらを取り纏め大から小までをポータル化する。やっと時代が巡ってきたようである。
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