Monday, May 19, 2008

-オープンソースとMicrosoftが時代を動かす-             TF#001 Archive 1/1/2007  

企業内IT部門にとって稼動中の巨大システムのメンテナンスは最重要課題である。

そして次々に押し寄せる新しい技術の波、IT部門はその狭間で、現行システムを運用しながら新たなテクノロジーに取り組む。

米コンピュータ業界はハイテク・バブルを境に大きく様変わりし、一般企業もまた経済競争の激化で環境は一変した。このような状況にあってもシステムは変遷し、社外向けは勿論、社内利用も殆どがWeb化され、データセンタ内ではメインフレームが縮退して、x86サーバがところ狭しと立ち並ぶ。

我々は90年代後半のインターネットとeコマース全盛期から2000年のバブル崩壊を経験して多くを学んだ。SOAService Oriented Architecture)の登場やオープンソースの台頭はまさにその表れである。

eコマース全盛期、インターネットを用いれば全てのB2CB2B取引はeコマースに置き換わり、その経済効果は計り知れないと考えた。そして、このストーリに大きな間違いはないと誰もが思っていた。しかし実際には多くのサイトが乱立し、取引プロトコルもバラバラで、XMLの記述にも統一性が無かった。さらに、今まで人間が行っていた取引の経験からくる勘や信用という財産が置き去りになっていた。バブル後、Webサービス(Web Service)規格がOASISで多くのベンダを巻き込んで徹底的に議論されたのはこういう苦い経緯があったからだ。そしてSOAはこのWebサービスの技術規格をベースとしたアーキテクチャとして登場してきた。

SOAの本来の目的は、システム構築の方法そのものを変えようというものだ。

システムの構成要素となるコンポーネントをシステム効率重視から、ビジネスに都合の良いサービス単位に変え、それらを連携させて業務処理を作り上げる。勿論、Webサービスを利用すれば外部企業とのサービス連携も可能となり、今日の経営スピードと環境に適合させることができる。

システム開発のもうひとつの動きとして再注目されているのがEAEnterprise Architecture)だ。EA分野の最近の顕著な動きは、システム設計ではなく、ビジネス(業務)設計に力点が置かれている。つまり、システム設計をより広義に捉え、ビジネス開発(Business Development)の当初から支援し、その結果をシステム開発に展開しようとするものである。そのツールとなるのがビジネス・モニタリング(Business Monitoring)やビジネス・アナリシス(Business Analysis)、ビジネス・プロセス・マネージメント(Business Process Management)などで、これらは徐々にSOAと相互補完の関係となりつつある。

オープンソースもまたバブル後遺症の中から台頭してきた。

その歴史はRichard Stallman氏が始めた「ソフトウェアの使用の自由運動(Software Freedom)」から始まった。今日、オープンソースはインターネットを介した緩やかな結びつきによって、多くの人たちが参加し、開発から各国語化やサポートまで幅広く機能するコラボレーション・システムとして無くてはならないものとなった。オープンソース製品は各種Linux OSからデータベース、 Webサーバ、Applicationサーバ、各種のスクリプト言語やフレームワーク、そしてCRMERPのアプリケーションなども登場し、近代コンピュータ産業の大きな改革にまで成長した。

最大手のITベンダのIBMは先頭を切って自社製品やサービスをオープンソースに同化させ、Sun MicrosystemsSolaris OSからJavaまで全てをオープンソース化する戦略をとり、Oracleもオープンソース・データベースSleepyCatの買収やOracle Fusionとの連動に積極的に取り組んでいる。また大手とは別に、中小では当初からオープンソースとして設立した企業も多く、さらに既存のプロプライエタリISVがオープンソース化することは日常茶飯事となってきた。

この流れに呼応してMicrosoftも動き出した。

今のMicrosoftは、プロプライエタリ企業の代名詞だった以前のIBMの感じがある。WindowsはクライアントPC市場で圧倒的な強みを示し、サーバ市場のOS別出荷でも最大シェアを握る。もはやWindowsを抜きには企業ITシステムは語れない。

彼らの製品は360°の展開をし、XboxZuneはエンタテーイメント分野でSonyAppleMSNGoogleYahooと競合、そして6年ぶりに新OS Windows Vistaが登場、企業向けには次期サーバOSLonghorn.NET3で独自の世界を展開する。だからこそ、自社アーキテクチャと外の世界を繋ぐ技術が大事になる。このことを心得たMicrosoftは、Web Serviceに積極的に取り組み、標準化ではIBMと共同戦線を張って、結果は全て.NETに取り込んだ。SunJavaライセンス係争は20044月に和解、そして昨年11月予想もしなかったNovellとの提携を発表し、WindowsSuSE Linuxの相互運用性向上のコラボレーションをスタートさせた。

Microsoftにとって、VistaLonghornBill Gates氏の最後の仕事である。

今年後半出荷予定のLonghornが安定するのを見届けて氏は引退する。一昨年から始まったGates氏後の人事は、氏の意向を色濃く反映しながら試行し、今、最終形へと向かっている。

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