Tuesday, May 20, 2008

Web2.0の技術(1):                    -Mac&YahooウィジェットとGoogleガジェット-            TF#007 Archive 6/15/2007

 ウィジェット(Widget)がデスクトップに最初に登場したのは、2005年4月末にリリースされたMac OS X 10.4(コードネームTiger)からだと思う。OS X 10.4では同梱されたミニ・アプリケーションをホットキー(デフォルトはF12)で切り替え表示するDashboardが登場した。つまりDashboardがウィジェットの実行環境となり、HTMLやCSS、JavaScriptを利用して作られたアプリケーションを走らせた。発表当時たった14個だったウィジェットは開発環境の公開と普及で、現在は3,000近くに膨れ上がっている。

        

 そのAppleは6月11日から始まったWWDC(World-Wide Developers Conference)で発売を6月末に控えたiPhoneについて、アプリケーション開発はWeb2.0準拠としてサードパーティに開放すると発表した。現段階で開発に関する詳細な情報はないが、タッチスクリーンのiPhoneアプリケーションは統制のとれたウィジェットの集合体であるかのようにみえる。

 Googleの場合、2004年に始まった「Google Desktop Search」は、当初タスクバーに検索ワクを設けた形で登場した。翌2005年8月には「Google Desktop 2」でスクリーン右側に表示されるサードバー(右上段)が登場し、ユーザは各種の情報をパーソナライズ出来るようになった。サイドバーはパネルと呼ばれる領域に区分され、そこに用意された「新着メール」や「株価」「天気予報」などのプラグインを選択して表示させる。これがGoogleガジェット(Gadget)の始まりである。

昨年2月に出たGoogle Desktop 3ではサイドバーのカスタマイズ機能を向上させたり、Ctrlキーを2度押すと「Quick Search Box」がスクリーンの中央に表示されて、どの場面でもすぐに検索が行えるようになった。Desktop 4(昨年5月)ではガジェットは大幅に増え、Desktop 5(今年3月)になるとWindows Vistaに合わせ、サイドバーが壁紙に溶け込む透明なデザインへと進化している。

ガジェット開発のために公開されている「Google Desktop Gadgets API」にはJavaScriptやVBScriptで作成するためのオブジェクトやメソッドが含まれ、それらは「Google Desktop SDK(Software Development Kit)」として提供されている。またDesktop 4からはインターフェース設計やテストなどを行う統合開発環境の「Google Desktop Gadget Designer」もリリース、一般デベロッパーによる「Google Desktop Gadget Contest」もスタートした。

 Microsoftも今年始めにリリースされたWindows VistaからGoogleと同様のサイドバー(右下段)とガジェットの提供を始め、デベロッパ向けリソース・サイト「Gadget Builder Depot」も開設している。

Googleはまた、4月末にユーザがカスタマイズできるポータル・サービスのパーソナライズ・ホームページを「iGoogle」と呼称変更して機能向上を図った。このiGoogleの使用にはGoogleアカウントがいるが、サイドバーのガジェットと同様のコンテンツが表示できるし、追加コンテンツにはGoogleならではの各種検索用のものやニュース/スポーツ/テクノロジーなどをRSSで集めた情報表示が勢揃いし、さらに整理のためのタブの追加、そして壁紙にあたるテーマ設定も可能となっている。



Googleガジェットの始まりと同時期、2005年7月、Yahoo!もJavaScriptのランタイム・エンジンを開発していたPixoriaを買収。Pixoriaの製品「Konfabulator」はWindowsやMac上でミニ・アクセサリを実行させることが出来た。Yahoo!はこれを広くXML APIに適用し、「Yahoo! Widget」として公開、ここでもデベロッパー・ネットワークの拡大が試みられた。

           
このようにウィジェットやガジェットには幾つかの方法がある。
ユーザ・インターフェースから見ると、AppleのDashboardウィジェットとYahoo!ウィジェットがスクリーン上のどこにでも配置できるという点で共通している。一方のGoogleとMicrosoftは酷似し、Googleはサイドバー上への配置にこだわり、Microsoftはこの方式に追従した。サイドバーはワイド・スクリーンに適し、いつでも見れるという利点の代わりに、情報量では制限がある。そこでGoogleはiGoogleと使い分け、一般にはサイドバー、上級使用にはiGoogleという併用作戦に出たようである。

さて、各社共、普及のためにデベロッパー・ネットワーク作りに注力している。
これまでに賞金付きのコンテストなどの甲斐あって、現時点での登録数はGoogleが7800件~、Yahoo!も4100件~、Appleが3000件~となっている。しかし、これらは仕組みがほぼ同様であるのに、実装方法が異なることから、デベロッパは同じような開発を行ったり、一方でユーザは混在使用が難しく、見せ掛けの混用もままならない。

この現象はAjaxも同様だった。
Ajaxの場合は、もっと多くのランタイム・エンジンやツールが存在し、状況を憂えたベンダ数社が音頭をとって2006年始め「OpenAjax Alliance」を設立した。しかし、一旦、広がった方法はひとつにはならず、現在はオープンソース化の推進を通して、相互互換性などに傾注している。

注目される動きがあった。
昨年6月Opera SoftwareがブラウザOpera 9のリリースに伴って、ウィジェット仕様を公開。
同社は、その仕様をW3C(World-Wide Web Consortium)に提出し、昨年の暮れからオープン・スタンダード「Widgets 1.0」として検討が始まった。ただW3Cで標準化が決まっても各社が従来路線を改め、ひとつの仕様に向かうことは容易ではない。一方では、実質、どの方法もAPIやSDKを公開し、一部ではコードもオープンソース化し始めている。状況は楽観的ではないが、エンタープライズへの適用には標準化は欠かせず、関係者の努力に期待したい。

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