Monday, May 19, 2008

-オープンソース・ビジネス・モデル-                   TF#006 Archive 6/1/2007 

今年初めて「Open Source Catalogue 2007」と題したソフトウェア・カタログが出た。

出したのはオープンソースのシステム・インテグレーションとコンサルティングを手がけるOptarosだ。このカタログ自身は「Creative Commons Attribution」ライセンスで公開されているので、ここに著作物の帰属をOptaros Inc.と明記し、その内容を紹介する。

カタログには262種のオープンソース・プロダクトとその評価が掲載されている。製品毎に、バージョン/概要/ライセンス/サポート形態などが記され、機能性やコミュニティ、成熟度が5段階で表示、さらに企業使用への適応度EREnterprise Readiness)や市場傾向も付加されている。この評価結果の公表は、コミュニティやベンダにとって悲喜こもごもとなったが、同社ではこれらは実務経験から得たものだと説明している。ここではカタログは同社サイトからダウンロードできるので、その評価は読者に任せるとし、以下、記載されているオープンソースと従来型ソフトウェア・ビジネスの差異、そして幾つかあるオープンソースのビジネス・モデルについて要約を試みた。


<オープンソース・ビジネス・モデルとその影響>

「オープンソース」は、特別目新しい概念でははなく、実際のところ1950年代のメインフレーム全盛期にはソフトウェアは無償で提供されていた。60年代になるとソフトウェアをビジネスとする考えが芽生え、それと共に第3者による変更を認めず、ソフトウェアを資産とする考え方が登場した。このような流れに対し、Richard Stallman氏は彼が開発していたEmacsエディタを解放して、ソフトウェアの自由(Software Freedom)を唱え、それがGNU Public LicenseGPL)を核とするFree Software Foundation活動の始まりとなった。

しかしながら初期のこの試みはなかなか進まず、90年代になって、インターネット時代の到来と共に一気に浸透し出した。そしてLinus Torvalds氏が1991年にLinux開発をスタートさせ、ApacheMySQLNetscapeSunなどがインターネット上のコミュニティを組織化するに従い、企業内使用の機運も高まって、各種のコンポーネントやインフラ製品が登場した。その後、それらのサポートやメンテナンス、コンサルテーションの要求も出て、初期のオープンソース・ビジネス・モデルが登場した。

普及が進むに連れ、オープンソースと従来型ソフトウェアのビジネス・モデルの差異も次第にはっきりしてきた。下図から判るように、今までのソフトウェア・ビジネス・モデルでは、収益はライセンスとサービス売り上げがほぼ折半し、コストの最大なものはセールス/マーケティングである。これに対し、オープンソース企業は、全般的にマーケティングやディストリビューションにコストをかけず、コミュニティを利用して高品質ソフトウェアを低コストで開発し、そのサービスの提供に焦点を合わせている。オープンソース・ビジネス・モデルでも、一部、デュアル・ライセンス(後述)によるライセンス売り上げはあるが、それらは微小で、基本的にはサービス売り上げが主体となっている。

このような市場の変化によって、従来型ソフトウェア企業の多くは、オープンソース・プロダクトからの価格圧迫を強いられ、結果として、それらの製品を自社製品に組み入れたり、オープンソース企業やプロジェクトを買収して対応せざるを得なくなってきた。

VC投資とビジネス・モデル>

VCVenture Capital)投資も活発となった。

VC議論の多くは、どうやってビジネスに仕上げるかであるが、以下の4つは、どのようにオープンソース・セントリックにするかを示したビジネス・モデルである。初めのモデル①「Proprietary Offerings」では、ソフトウェアのオープンソース版は一連のプロダクト・ラインのエントリ用として無償で提供され、それとは別に、一般企業が必要とする追加機能、ないし機能強化版が有償のプロプライエタリなコマーシャル・ライセンスで提供される。これらの代表的なものにはIBMWebSphereSugarCRMなどがある。

 2番目のモデル②「Dual Licenses」は、オープンソース版もコマーシャル版も同一のソースコードからなり、オープンソース版は無償のGPLなどでその普及を目指し、有償のコマーシャル版はサポートなどの付加価値をつけたものである。MySQLTrolltechQtなどが該当する。

モデル③「Subscriptions」は、オープンソースのサービスに係るサブスクリプション方式で、ソフトウェア自身に価格はない。利用するユーザは、パッケージングや新リリース、パッチ、サポートなどのために年間利用料を支払う。これにはRed HatSuSEなどのLinuxディストリビューション、JBossAlfresco、さらにはスタック・サービスのSpikeSourceSourceLabsなどが該当する。

最後のモデル④「Value Add Services」は、オープンソース・プロダクトに対する付加価値サービスである。このサービスは、どれか1つのプロダクトというよりも顧客の抱えるプロジェクトに依存したコンサルテーションやインテグレーション、サポート、ホスティングなどを通して複数のプロダクトを対象に行われる。Optaros社やLinagora社がこの範疇である。

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今やオープンソースはソフトウェアを取り巻く全体に影響を与える価値観を生み出した。

VCの投資や指導でビジネス・モデルも定着し始め、米国内の企業利用調査では、多くの企業で50から100以上のオープンソース・コンポーネントが使用されているという。

ただ、日々、システムの維持開発の追われる企業のIT部門にとって、実存する14万以上のプロジェクトの中からどのプロダクトが良いのかを見つけ出すのは、至難の業だ。このような状況下にあって、このカタログの試みは大いに評価されるべきであり、同社のようなシステム・インテグレータが、ユーザとコミュニティやベンダの間で調整役となって活躍することを期待したい。

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