Monday, May 19, 2008

-Microsoftの総合コミュニケーション戦略-             TF#005 Archive 5/15/2007

このところMicrosoft社のコミュニケーション市場戦略が活発化している。

昨年、MicrosoftNortel Networksが包括提携をした時、業界アナリストはCiscoとの争いが激しくなると予想した。その通り、Microsoftの企業向けVoIP戦略が鮮明になるに従い、専業のCiscoAvayaだけでなく、IBM3Comなども巻き込んだ動きとなってきた。そのMicrosoftVoIPだけでなく、ビジネス用音声応答製品の開発、コンスーマ市場ではTellme社を買収して音声認識サービスにも進出し始めた。

Cisco/IBMとの戦い-Office Communication Server 2007

業界最大手でVoIPではBank of Americaなど沢山の企業ユーザを持つCiscoにとって、最大の泣き所はバックエンド・システムを持たないことだ。この部分が無ければ、ユーザは自由なシステム構築が出来ない。こうしてバックエンドがないCiscoIBM手を結び、フロントエンドでNortelと提携したMicrosoftとの戦いが始まった。勿論、両陣営ともVoIPを強調しているが既存回線やインターネットを含めた「統合コミュニケーション(Unified Communication)」と「アプリケーションの連携」が柱である。

フロリダで開催された「VoiceCon 2007 Spring」のキーノートでMicrosoftビジネス部門の最高責任者Jeff Raikes氏(President, Microsoft Business Division)からクライアント用の「Office Communicator 2007」と対になるサーバ「Office Communications Server 2007」のパブリックβ版が発表された。この統合コミュニケーション・サーバは、VoIP/加入電話/携帯電話/インターネットを介して、音声/動画/テキストなどのコンテンツを総合的に扱うことができる。提携先のNortel技術を加えたWebカンファレンス機能も搭載され、企業各社の独自アプリケーションやMicrosoft OfficeSharePointとも連動する。Raikes氏は、ユーザはこれまでOfficeソフトウェアとIPテレフォニーは別なものと思ってきたが、この統合サーバの登場で総合的に利用することが出来るようになると説明する。

迎え打つCiscoは、驚いたことに同じカンファレンスでIBMが主導するJavaコンポーネントのEclipseファンデーションに参加し、IBMと共に統合コミュニケーション&コラボレーション(Unified Communications & Collaboration)のクライアント・プラットフォーム「UC2」を開発すると発表した。IBMはこのプロジェクトにIMWebカンファレンス・コラボレーション「Lotus Sametime」のAPIとコンポーネントを提供する。両社は今後の製品計画をUC2上で行い、IBMLotus Sametime 7.5以降、Ciscoも「Cisco Unified Personal Communicator Client」の次期バージョンを開発する予定だ。

<中小企業向け音声認識電話システム-Response Point

Microsoftはまた、今年で2回目になるMicrosoft Small Business Summitで中小企業向けIP電話システム「Response Point」のβ版を発表した。このシステムはオープンソースのAsteriskに似たPCベースVoIP交換システムであるが、最大の特徴は音声認識機能を持つことである。

対応する電話機はアダプタとセットになって米国D-Link、台湾のQuanta Computer、日本のユニデン(写真:Uniden Evolo)が試作品を出している。

この新型電話機の導入は至って簡単で、各人がアダプタと電話機をネットワークに繋ぎ、マネージメント・コンソールから名前や割り当て内線番号、所属などを入れればOKだ。特徴の音声認識は受話器上の「Response Point」ボタン(写真では右下の青ボタン)を押し、名前を呼ぶと相手に自動接続される。外線電話からの顧客が音声応答に答え「セールス」と言えば営業部門に回る仕組みである。

Response Pointはまた、Outlookの連絡先リストをクリックすることで呼び出すこともできる。中小企業にとってPBXは高価で手が届かない。さりとてAsteriskでは自信が無いという企業にとっては安全でかつ有効な選択となる。

<音声案内でGoogleに対抗-Tellme

コンスーマ向け音声システムでもMicrosoftは活発である。

314日、Microsoftが音声技術を使用し、電話検索で地域情報や道順、天気予報、株式などを提供するTellme Networksを買収した。追いかけるよう46日、Googleが地域情報を電話で提供する「Google Voice Local Search」の実験を開始。417日には、傘下となったTellmeから既存サービスを全て音声で行う機能アップとモバイル用「Tellme by Mobile」β版が発表され、両社のデットヒートが始まった。

Tellmeの買収はMicrosoftにとって、このところの最大規模で想定8億㌦を超えたと言う。

Microsoftはこれ以外に、199910月に音声認識ソフトウェアのEntropic200510月には音声応答コールセンタのUnveil、昨年10月にも自然語処理によるオンライン・サービスのColloquisと次々に買収し、技術強化を図ってきた。これらの成果は、Colloquisの「Automated Service Agent」がリブランドされて「Windows Live Service Agents」となり、2004年から始まったSpeech Serverは強化されて、今回のOffice Communications Server 2007に統合されることになった。


 時代はインターネットと既存電話回線網の統合コミュニケーション(テキスト、画像、ビデオ、音声)を目指し、さらに自然語理解とその応答システムに向けて動き出している。こうなると、もはや1企業で全てを賄うことは不可能だ。どこと組んで何をやるか、その明確な戦略なくしては勝ち残れない。音声認識では一日の長のあった「IBM ViaVoice」も影が薄くなり、そのIBMCiscoと組み、さらには3Comとも共同提案する作戦に出ている。コールセンタのAvayaLenovoと組んでビジネス用ノートPCVoIP化を推進する。

従業員11万人の石油大企業Royal Dutch ShellMicrosoftNortelの技術提携に賛同し、向こう2年かけてネットワークを統合コミュニケーション・システムへ移行を開始した。まさに通信とコンピュータの統合化への時代に突入である。

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