Monday, May 19, 2008

-Microsoftの大型提携戦略-                     TF#003 Archive 4/10/2007

ちょうど1年前、MicrosoftWindows VistaOffice 2007の出荷を睨み、業務使用で即戦力とすべく「People-Ready Business」構想を発表した。CEOSteve Ballmer氏(写真)はこのキャンペーンで①「統合コミュニケーションとコラボレーション-Unified Communications and Collaboration」、②「企業向け検索-Enterprise Search」、③「モバイル・ワーカ-Mobile Work Force」、④「ビジネス・インテリジェンス-Business Intelligence」、⑤「顧客管理-Customer Relationship Management」、⑥「インフラストラクチャ-Infrastructure」の6つの分野が焦点になると説明。

当初、このPeople-ReadyいつものMicrosoftのキャンペーンと同種のものと思われたが、その後の動きは異なっていた。まず、同社は、昨年夏(7/18)、通信大手のNortelと彼らのネットワーク技術や製品とMicrosoftのソフトウェアを融合する提携を発表。同年、冬(11/2)にはNovellとの間でWindowsLinuxの相互運用性向上HPとのソフトウェア・ポートフォリオ相互補完提携(12/14)、今年3月末(3/28)にはEMCとネットワークの管理技術と矢継ぎ早に大型提携を実行した。

これらの提携を詳しく見てみよう。

Nortelとの提携後半年たって発表(1/17)されたロードマップでは、3種類の製品統合と10種以上のサービス提供が決まり、両社合同のデモンストレーション・センタを全世界に20ヶ所以上に新設する。即ち、コミュニケーション分野に精通し、十分な実績を持つNortel提携することで、Microsoftは本格的にこの分野にかれらのサービス力を利用しながら進出し、大型でより専門性の高い製品はNortelから、小型はMicrosoftが担当するという共同作戦に出たわけである。

Novellとの提携でもLinuxWindowsの相互運用性がこれからの企業IT部門にとって不可欠であり、これに回答を出すことが将来基盤を確固たるものにするという大局的な判断からだ。この提携は2012年までを範囲とし、「広範囲なWindowsLinuxの相互運用性の向上とサポート(Broad Collaboration on Windows and Linux Interoperability and Support)」を目的としている。このため両社は研究施設を整備し、①仮想化技術(Virtualization)、②Webサービスによる仮想化サーバを含めたIT管理(Web Services for Managing Physical and Virtual Servers)、③ディレクトリとID分野の互換性(Directory & Identification Interoperability)、④文書フォーマットの互換性(Document Format Compatibility)の4点を重点課題として作業を進める。

HPとは即使用できる「People-Ready Business」を具現化するために①メッセージング&コミュニケーション、②コラボレーション&コンテンツ・マネージメント、③BIBusiness Intelligence)、④ビジネス・プロセス・インテグレーション、⑤ソフトウェア・インフラストラクチャの5つの分野で相互ポートフォリオを補完・拡大させ、これによって両社は力を合わせてIBMに挑む構えである。

直近のEMCとの提携は、ネットワーク管理技術とそのライセンスを含むものとなっている。この提携でMicrosoftEMCからネットワーク管理技術「EMC Smarts」のライセンス供与を受け、自社のエンド・ツゥ・エンドのサービス・モニタリング「Microsoft System Center Operations Manager」に組み込み、さらにEMCが開発するVAN管理やRCARoot Cause Analysis)管理も暫時統合していく予定だ。両社はこの提携の最初の製品としてSmartsSystem Center Operations Managerのデータを相互に共有可能にする「EMC Smarts Connector for Microsoft System Center Operations Manager 2007」を発表した。

このようにみると、Microsoftが進めてきた一連の大型提携の意味するところは大きい。        これはまさに企業大連合であり、Windows VistaWindows Server 2008が作り出す世界が今までとは大きく異なることを意味する。つまりMicrosoftは自社だけでは出来ない領域を各業界のリーダ企業と組んで製品やサービスを拡充し、企業IT部門の要求に応える。言い換えれば、IT部門がやっていたことをMicrosoftが代わって、関連各社と提携、そして互換性や拡張性を保障した製品やサービスを提供する。どのベンダも試みなかったこの戦略がどのように機能するか目が離せない。




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