Monday, May 19, 2008

-Novell、SuSE LinuxとWindowsの連携!-           TF#002 Archive 3/25/2007

Novellの年次カンファレンス「BrainShare 2007」がユタ州ソルトレーク市(3/19-23)で開催され、キーノートを努めるCEORon Hovsepian氏(写真左)がステージ上にMicrosoftCraig Mundie氏(写真右下)を招きあげ、硬く握手を交わした。Mundie氏と言えば昨年6月にBill Gates氏の肝いりで最高研究戦略責任者(Chief Research & Strategy Officer)となり、来年夏からはGates氏後の重要な役割をチーフ・ソフトウェア・アーキテクトのRay Ozzie氏と共に分担する重要人物である。

記憶をたどると我々の頭の中では、NovellとはNetWareからLinuxへと常にMicrosoftに挑戦し続けてきた会社だった。1980年代CEOに就任したRay Noorda氏は、個人使用の PCからプリンタやファイル共用の出来るNetWareで企業内ネットワーク時代を作り上げ、1990年代にはコンカレントDOSDigital Research買収やAT&TからUnix System-Ⅴの購入、その後もワープロのWordPerfectや表計算ソフトウェアのQuattro Proも買収して、Microsoftへの徹底抗戦の路線を突き進んだ。しかし、これらの戦略も結局は上手く行かず、Novellは凋落し、1995年にJack Messman氏が引き継いだ。

Jack Messman氏は、20038月、デスクトップLinuxXimian11月にはドイツSuSEの買収を決めた。この2つの買収は、同社にとって大きな転機となった。SuSE製品は「Novell SuSE Linux」となり、XimianCEOだったDavid Patrick氏が新生NovellLinux部門責任者に就任、Ximianの創設者でありオープンソースの世界では有名なMiguel de Icazaと氏Nat Friedman氏は、彼らが設立に努力したGNOMEMonoの2つのプロジェクトを引き継ぎ、かつCTOだったMiguel de Icaza氏がそのままNovell Linux部門のCTOに就任した。しかし、この大戦略を指揮したJack Messman氏もまた、Noorda氏が育てたNetWareビジネス(現在はSuSE LinuxベースのOpen Enterprise Server)から完全には抜け出せず、昨年6月に辞任。

そしてMicrosoftとの提携(11/2)と言う大方針転換を決めたのは、その後、CEOに就任したRon Hovespian氏だ。この2012年までを範囲とする提携の主目的は「広範囲なWindowsLinuxの相互運用性の向上とサポート(Broad Collaboration on Windows and Linux Interoperability and Support)」である。今回の言わば宿敵同士の提携について、Microsoft CEOSteve Ballmer氏は「あり得ないと言われてきたことが起きた。これは新しいモデルであり、新しい時代の幕開けで、ユーザに多くの利便性を提供するだろう」とコメントした。

カンファレンスでは、ステージ上のMundie氏にNovell CTOJeff Jaffee氏が加わり、WindowsLinuxの2つのプラットフォームが将来のコンピューティングを担い、そのための相互運用性の確立こそがユーザが求めているものだと提携の意義を強調した。続くデモではWindowsが稼動するSuSE Linux 10Longhorn上でのSuSEの実行、両OS間でのファイル移動やディレクトリ連携、Open XML/ODF TranslatorによるOffice Open XMLOOXML)文書とISO標準ODFOpenDocument Format)文書の変換保存などが披露された。

本カンファレンスに先立って発表(2/14)された提携作業のロードマップでは、仮想化について、Xen3.0を搭載したSuSE Linux 10はともかく、遅れているMicrosoft側は本年2Q末までに「Microsoft Virtual Server 2005 R2」用SP1をリリース。同製品上でSuSEをゲストOSとして実行させ、下期の次期「Windows Longhorn Server」でも同様の稼動を目指すとしている。次にWeb サービス・ベースの管理分野では、Novellが主導してオープンソース・コミュニティと協力、AMDDellIntelMicrosoftSun Microsystemsなど各社が賛同して共同発表(2005/3)したWeb サービス・ベースのマネージメント規格「WS-Management」の実装に取り組む。この仕様はWeb サービスそのものではなく、Webサービス・ベースのプロトコルを規定したもので、ネットワーク上のIT機器管理を目的として標準化団体Distributed Management Task ForceDMTF)が取り纏めたものである。

Novellにとって提携は、直接的な販売効果も大きかった。

特にMicrosoftが積極的なセールス・サポートを展開し、WindowsLinuxの両方を必要とするユーザ企業にSuSE Linux Enterprise Serverを推奨。そのサブスクリプション用クーポンを7万枚事前にNovellより購入し、昨年末にはドイツのDeutsche Bank、スイスのCredit Suisse、米AIG Technologies、今年1月にアメリカ最大の小売業Wal-Mart3月にはイギリスの香港上海銀行(HSBC)など次々大物を釣りあげて配布した。Novell自身も2月始め、フランスの大手自動車メーカのPeugeot CitroenからデスクトップPC2万台、サーバ2500台にSuSE Linuxを搭載する契約を受注して気を吐いている。

これらの例で見るように、どこの企業にもWindowsは導入されており、とりわけクライアントOSでは寡占状態にある。サーバ側もメインフレームやUnixは衰退し、いずれはWindowsLinuxしか残らないかもしれない。この両社はこのような時代を見越し、今までの仇敵同士が提携するという離れ業をやって見せてくれた。勿論、この提携を取り巻く色々な議論や課題もあるが、それはともかく、我々は時代の変わり目にいるようである。



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